好きを君に。

卒業式


卒業式の朝。

身支度を整えて、鏡に映る制服姿の自分を見る。
入学してもう三年がたったんだ。
最初に着た時は真新しくて制服に着させられてるような感じだったけど、いつのまにか制服がぴったりになって違和感が無くなった。

新鮮だった毎日はいつのまにか日常になって、何も思わなくなって。

入学したてのあの頃と、あたしは何か変わったのかな?
あの頃に比べると、少しは大人になったのかな?

今日が、最後。
中学生としてこの制服を着て、学校に行くのは、今日で終わりなんだ。

一輪挿しのエーデルワイスが目にとまる。

藤崎と会うのも、最後になるかもしれない。
勇気を出すなら、今日しかない。

桐野にも、返事をしよう。
あたしがだした結論をきちんと伝えたい。
まっすぐに想いを伝えてくれた桐野に、ちゃんと応えたい。


あたしはよし、と小さく気合を入れて、家を出た。


3年間通い慣れた道を歩く。
この道も、最後。
すべてが最後に染まっていく。

楽しいことも、苦しいこともあったけれど、最後にはやっぱり寂しいって思う。


学校について教室に入ると、机の上には在校生が作ったコサージュが置いてあった。
ピンクのバラの下に卒業おめでとうございますの文字。
それをみると、本当に卒業するんだなあ、としみじみ思ってしまう。

教室には半分くらい生徒がいた。
千香は、まだきてないみたいだ。

「おはよ、高坂」
コサージュを胸ポケットにつけていると、後ろから声をかけられて振り向く。
「おはよう、桐野。あ、あのね」
「うん?」
挨拶だけで中に入っていこうとした桐野を呼び止めると、優しく返してくれる。
「今日、卒業式終わったあと、ちょっと時間、いい?」
「ーーもちろん」
「ありがとう。じゃあまた、あとで」
「うん」
桐野は笑顔で頷くと、自分の席へ向かっていった。


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