好きを君に。
一人で反省しながら廊下を歩き、ゴミ捨て場にゴミを捨てて二人でまた教室へ向かう。
無言の時間。
なにを話せばいいのか思案していると、先に話したのはやっぱり藤崎だった。
「――お前さあ」
呼びかけられて、藤崎を見ると、丸い瞳があたしを射抜いた。
その瞬間に、胸の中がきゅうっと締め付けられて、静かにどきどきする。
「高校、どこ志望だっけ?」
「……東高」
「ふうーん。俺は東高じゃないから、高校は別だな」
なんにも思っていない、あっさりとした口調に、少しだけ心が傷ついた。
「あんたの顔見なくてすむとおもうとせいせいするわ」
それを悟られないように、また憎まれ口がでてしまう。
「こっちのセリフだ」
藤崎も負けじと言い返して、そのまま静寂が訪れる。
ーーわかってたのに、心が痛い。
やっぱり藤崎にとって、あたしはただのケンカ友達なんだな。と思い知らされて。
友達ですら、ないのかもしれないけど。
あたしたちは、春から絶対に別の高校に入学する。
それを知ったのは、進路希望調査が配られたあの日。
「悠哉、志望校どこ?」
当時藤崎と席が近かったあたしの耳に、そんな言葉が飛び込んできた。
それは、あたしが一番知りたかったことで、でも本人になかなか聞けなかったことだ。
全神経を耳に集中していたあたしの耳に飛び込んだのは。
「俺は北高だな」
迷いもなく放たれたその一言は、同じ高校だったらいいなというあたしの淡い期待をあっさりと打ち砕いた。
北高?
え?どこそれ。
聞いた事のない高校で、あたしは頭がパニックだった。
「北高って北浜高? なんであんな遠いとこ行くの?」
「サッカー強いし」
「お前そんなサッカー上手くないじゃん」
「うるせえわ!」
そんなやり取りをしている二人を尻目に、あたしはただ遠いところなんだと愕然としていた。