緒臣くんのキケンな誘惑。
胸がキュッと締め付けられて、私は自分の思っていることを自分なりに伝えてみた。
慣れた方が辛くないのかもしれないけど……でも、慣れてほしくない。
千夏ちゃんにとって、それが当たり前になってほしくない。
そう言うと、驚いたように目を大きくさせて私を見つめた。
「…ありがとう」
「千夏ちゃん……」
「昔からそうだったの。みんな私の顔色を伺ってきてたのよ。私が機嫌良くないと、私の機嫌取ろうとみんな顔をひきつらせながら寄ってくるの」
はぁ……とどこか遠くを見るような目でそういう千夏ちゃん。
「最初はみんなに気を遣わせないためにどんな時でも明るく振舞ってた。でも途中で馬鹿馬鹿しいって気づいたの。それから周りに合わせるのはやめたわ」
「……」
「だから、紫夕が言ったように私も誰かにいい顔しようなんて思ってない。こんな私でも仲良くしてくれる人だけいればいい」