緒臣くんのキケンな誘惑。
「遅くなっちゃってごめんね。帰る?」
「うん、帰ろっか……その前に一瞬だけ」
「っ、わ……っ」
緒臣くんはそう言うと、私の腰に手を回してグイッと引っ張った。
えっ、なに……っ、これはどういう状況……っ!!
抱きしめられているのに、緒臣くんが座ってて私が立っているせいで、抱きしめているようにも見えるこの状況。
心臓の音が緒臣くんに直で丸聞こえでどんどん恥ずかしくなってしまう。
「充電完了。よし、帰ろう」
でも緒臣くんの言った通り、一瞬で温もりが離れた。
普通な様子の緒臣くんに対して、私はもうバックバクで。
「紫夕荷物は?」
「へ…っ!?あ、教室……!」
「じゃあ取りに行こう」
かああっと赤くなる顔を必死に冷まそうしていると、緒臣くんにそう言われてハッとする。