緒臣くんのキケンな誘惑。




そうだ、まだ教室行ってないんだ……!
鞄の存在を思い出して取りに行こうとドアの方に歩くと、緒臣くんも自分の荷物を持って着いてきて。


「あ、そうだ」

「え?どうかしたの?」

「俺紫夕のこと待ってたけど、放課後になってすぐに言ったことは取り消せないからね?」

「……え?」


そう言った緒臣くんに、頭を傾げる。
放課後になってすぐってことは……私が職員室に行く前だよね?

そう思って記憶を辿る。

……っ、あ。

パッと緒臣くんの方を見ると、またどこか読めない表情で笑ってて。


「毎日帰ろうって約束したもんね?」

「……っ!」


今日一緒に帰れない代わりに、の約束だったんじゃ……!?

あの時申し訳なくて頷いてしまったこと。
でもきっと、これは全部緒臣くんの作戦だったんだろう。

絶対緒臣くんの思い通りすぎる……策士だ……!!!


緒臣くんの意味深な笑顔を見て、この人はキケンだと改めて思った。




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