緒臣くんのキケンな誘惑。
倒れずに済んで、そのまま勢いで顔を上にあげると。
「…あれ、紫夕?」
「し、紫月先輩……っ!?」
私を支えてくれたのは、紫月先輩で。
驚いたような顔をしながら私を見る先輩に焦ってしまう。
「す、すみません……!!」
「大丈夫?どうしたのそんな急いで」
「え、えっと…っ」
「───…紫夕から離れろ」
私の肩を掴みながら顔を覗き込んでくる紫月先輩に、なんて言おうか迷ってしまう。
でも、答えてる暇なんかないんです……!
なんて思ってた時、後ろから強引に手を回されて引き寄せられた。
私を追いかけてきた緒臣くんの、不機嫌な低い声にビクッと肩が跳ねる。
や、やば……っ。
「え、天沢じゃん。なんで紫夕逃げてんの?」
「…誰」
「…怖いねえ。そんな警戒しなくても」
「あ、あの、緒臣くん……っ?」
緒臣くんの表情で何かを読み取ったのか、少し悪そうな顔をする紫月先輩。
な、なんか嫌な予感が……っ!