緒臣くんのキケンな誘惑。
引っ込められた手を目で追いながら、落ち着け落ち着けと言い聞かせる。
「…え、えっと……天沢、くん?」
「…ああ、言ってなかったね」
このドキドキが悟られないように、必死に話題を絞り出す。
ネクタイの色から同い年っぽいし……先輩呼びじゃなくて君呼びで大丈夫だよね……?
確認するように名前を呼んでみると、ああと思い出したかのように彼は口を開いた。
「天沢緒臣(あまさわ おみ)。四組だよ」
「天沢、緒臣くん……」
「そう」
ずっと謎だった彼の名前を知れてモヤモヤが解消されていく。
……なんだか、どこかで聞いたことのあるような名前だ。
それに……この綺麗な顔もどこかで……。
「…っ、あ」
「?」
お、お、お、思い出した……っ!!!!
この人だ!!昨日の四組で見たイケメンさん……!!!!
なんで気づかなかったんだろう……!!昨日顔見たはずなのに!!