緒臣くんのキケンな誘惑。




「あ、あの……天沢くん、本当にありが……っ」

「だめ」

「へ……っ?」


私の歩くペースに合わせながら横を歩く天沢くんにもう一度お礼を言おうとすると。

な、なぜ止められた……っ?
なぜか天沢くんは人差し指を私の唇に近づけてきて言葉を遮った。

ちょ、口につきそう……っギリギリ……っ!!
その人差し指を見ながらピタッと動きを止める。


「緒臣って呼んでほしい」

「え…っ?で、でも……」

「お願い紫夕」

「……っ」


こてんと首を傾げてそう言った天沢くんに頭が爆発しそうになる。

な、なんで……っ!?
なんて疑問に思うが、助けてくれた恩人にこんなあざといお願いされたら何も言えない。


「お、緒臣くん……」

「…うん、そう呼んで」


男の人の名前なんて中学生以来呼んだことないのに……っ!!と恥ずかしくなりながらも振り絞って声を出す。




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