緒臣くんのキケンな誘惑。
少しだけ黙り込んだ後に緒臣くんはそう言って、言葉に詰まってしまう。
なんてずるい聞き方をするんだろう。
初対面のはずなのに、この短時間で緒臣くんにはドキドキしっぱなしだ。
私…っ本当に慣れてないのに……!
「わ、わかった……」
結局負けて頷いてしまった。
湯たんぽを抱えながらクラスに向かう。
その間に緒臣くんのクラスの四組を通過し、三組も通過した。
教室からは廊下が丸見えだからか、通過するクラスから視線を感じてなぜかゾッとする。
……っ、まって、これ、私選択間違え……っ。
なんて考えた時にはもう遅く。
────ガラッ
二組のドアを開けるとクラスメイトの視線が一気にこっちに集まった。
「…お、大丈夫か音葉。事情は聞いてるから座れー……あれ、天沢?」
担当授業の先生が私に気づいて声をかけてくる。
そして、私の後ろを見て驚いたような顔をした。