緒臣くんのキケンな誘惑。
そう考えただけでも深いため息がもれて、何も考えたくなくなる。
「緒臣くんはみんなのものだと思ってたのに……」
「ショックだよねえ……もっと可愛い子だったら納得したけどさ」
あー!!はいはいうるさーい!!
みんなして遠回しにディスってくるじゃん……!
そんな声が聞こえて、心を落ち着かせようと大きく深呼吸する。
気にしてないから大丈夫大丈夫。
こうなることはなんとなくわかってたし、とりあえず聞こえてないふりしよう。
そう開き直って、脱いだ靴を右手で持ち下駄箱に入れる。
そのまま靴を履き替えようと取り出す……と同時。
「しーゆ」
「っ、へあ!?」
「ふっなにその声。そんなにびっくりしたの?」
「お、おお、緒臣くん……っ!?」
急に後ろのすぐ近くから声がして、驚いて変な声が出てしまう。