緒臣くんのキケンな誘惑。




「……理由はそれだけじゃないけどね」


え……?

最後にそう言った緒臣くんの表情はやっぱりどこか切なく見えて。

どういう意味……?
そう思って、首が傾く。


そんな私の心を読み取ったのか、緒臣くんは優しく笑って。


「…紫夕が思い出すまで待つよ」

「え?どういうこと……?」

「…ふふっ」


意味深な発言に、話が見えない。
……でもなにか、なにか……。
なんだろう……わからないけど……なにかが頭の中で絡まっている気がする。



しかし結局答えは出ずに、もう家の近くまで来てしまった。


「緒臣くんは家どこなの?」

「もう少し先だよ。紫夕の家よりも奥かな」

「そっか……ありがとう緒臣くん」


自分の家が見える場所まで来て、そう話す。

必然的に送ってもらう形になるのか……家が真逆とかだったら罪悪感あるけど、そうじゃないならまだ私の気持ちが楽だ。



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