もう誰にも恋なんてしないと誓った

7 準備室は施錠した方がいい◆シンシア

 サザーランドとハミルトン。

 双方の家の名前を出されて何も言えないキャメロンに繰り返し頭を下げると、渋々準備室を出ていった。

 彼をこの場に残したら、アイリスの説明に話を合わせられてしまう。
 ふたりの話す内容に齟齬が生じれば、それはわたしに有利に働く。


 わたしは残ったアイリスに返事を急がせず、黙って待った。


「……」



 わたしから席を外すように言われたキャメロンが準備室を出てからも、相変わらずアイリスは黙ったままだった。


 わたしをどう言いくるめようか考えているのかしらね。
 庇ってくれた共犯者のキャメロンはこの場に居ない。

 
 昼休み時間が終わるまで、このままだんまりを続けているつもりかも。
 下手なことを言って、後からキャメロンが話す内容と食い違えば、不利になることもわかっているのね。


 だけど、簡単には解放してあげないから。
 昼休みが終わる直前まで、わたしから離れられると思わないでね。

 多分追い出されたキャメロンはクラスに戻らずに、美術室に残ったままアイリスが出てくるのを待っていると思った。


 決まりかけていた縁組が破談になりかけていても。
 少しでも早く手を打つ為に家族に知らせなくては、なんて動いたりしないひとなのは、わかっている。
 彼は何だかんだ言って、高位貴族の子息なのに考えが甘い。

 ……だけどそんな優しさと言われる彼の甘さを、わたしは好ましく思っていた。



「ずっと黙っているおつもりですか?
 貴女とはよくおしゃべりしたけれど、肝心なことは話さないなんて、狡いひとね」

「……」

「わかりました。
 大切な親友だと思っていたのは、わたしだけでした。
 こんなことになって残念です」

「……」

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