もう誰にも恋なんてしないと誓った
「セーラ、そう言われても仕方がないの。
 オースティン様が仰られたことは、何も間違ってない……」


 わたしは母にはお兄様から言われた話はしていなかったのに、多分セーラ様からご連絡があって、母は知っていたのね。
 だけど、せっかくこう言ってくださっているのに。
 母がお兄様の肩を持たなくてもいいじゃない。


 セーラ様もそう思われたのか、親友とは言え自分に異論を言いかけた母を手を振って遮られた。


「いいのよ、ジェーン。
 最近オースティンは旦那様にも反対するような意見をしたりして、少し生意気なの。
 アイリス、普段はこちらに居ないオースティンなんかに遠慮しなくてもいいのよ。
 変わらずにキャムに会いに来てあげて。
 あの子は貴女が来てくれたら、とても楽しそうだもの」

「お兄様から注意された通りにしなくても、いいのでしょうか……」

「待ってセーラ、簡単に言わないで。
 侯爵閣下は何と仰られているの?」


 セーラ様とわたしの会話に、また母が口を挟む。


「旦那様は……特には何も仰らないわ。
 家政はわたくしに任せてくださっているもの。
 反対などなさらないわ」


 ここまで仰ってくださっていても、母はなんだか浮かない表情をしていた。
 でもわたしはセーラ様からいただいた言葉を信じたい。


 デビュタント前後から閣下に会うことは無くなった。
 それでも、お兄様はあんな風に仰ったけれど、閣下は今でもわたしがキャメロンとふたりで会うことに反対はされていないのだ。
 ただそれをはっきりとは口にしないだけ。


 これからも、わたしとキャメロンの関係は。
 爵位や男女を越えた幼馴染みという特別な関係は、変わらない。



 ゆっくり時間を取ったランチの後、セーラ様からお誘いされて侯爵家でお茶をいただくことになった。

 オースティンお兄様はまだ領地に帰っていないらしいので、顔を合わせたら気まずいだろうけれど、今日は母も一緒なのだから、文句は言われないはず。


 何よりセーラ様が側に居てくれる。
 あの日のようにわたしはひとりじゃない。
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