もう誰にも恋なんてしないと誓った
13 そこはわたしの場所◆アイリス
侯爵家の馬車に同乗させて貰い、出迎えた家令にいつものように温室にお茶の用意をするようにとセーラ様が命じると、家令が耳元で何かを報告していた。
それを聞いてセーラ様が忌々しそうに舌打ちをされた。
わたしの前でこんなに不機嫌な顔をされたのは初めてだったが、母は見慣れているのか、表情は少しも変わらない。
「連れてきてるのですって」
その言葉で。
誰が来ているのかわかってしまった。
シンシアだ。
観劇帰りにキャメロンがシンシアを、この邸に初めて連れてきたんだ……
「私達は失礼しましょう」
母はそう言ったが、セーラ様は頷かれなかった。
「貴女達はわたくしのお客様よ。
どうして遠慮しなくてはいけないの」
「……でも」
言い募ろうとした母を抑えて、セーラ様がわたしの腕を取った。
「アイリス、わたくしのエスコートでよろしければ、ようこそ侯爵邸へ」
わたしの顔を見て微笑んでくださったので、わたしも遠慮しないことにした。
この御方は侯爵家の女主人。
わたしはこの御方に招かれたのだから、遠慮することはない。
そう思おうとしていたのに。
温室まで続く庭園に彼等が居た。
何かを熱心に話している笑顔のキャメロンと。
それを聞いて微笑んでいるオースティンお兄様に挟まれて、楽しそうなシンシアが居た。
ずっとあの場所に居たのは、わたしだった。
幼い頃からキャメロンが冗談を言って笑わせてくれて。
それを聞いてお兄様が、わたしに微笑んで……
お兄様とキャメロンと、わたし。
その3人だけの、大切な場所に。
どうして、シンシアが居るの?
それを聞いてセーラ様が忌々しそうに舌打ちをされた。
わたしの前でこんなに不機嫌な顔をされたのは初めてだったが、母は見慣れているのか、表情は少しも変わらない。
「連れてきてるのですって」
その言葉で。
誰が来ているのかわかってしまった。
シンシアだ。
観劇帰りにキャメロンがシンシアを、この邸に初めて連れてきたんだ……
「私達は失礼しましょう」
母はそう言ったが、セーラ様は頷かれなかった。
「貴女達はわたくしのお客様よ。
どうして遠慮しなくてはいけないの」
「……でも」
言い募ろうとした母を抑えて、セーラ様がわたしの腕を取った。
「アイリス、わたくしのエスコートでよろしければ、ようこそ侯爵邸へ」
わたしの顔を見て微笑んでくださったので、わたしも遠慮しないことにした。
この御方は侯爵家の女主人。
わたしはこの御方に招かれたのだから、遠慮することはない。
そう思おうとしていたのに。
温室まで続く庭園に彼等が居た。
何かを熱心に話している笑顔のキャメロンと。
それを聞いて微笑んでいるオースティンお兄様に挟まれて、楽しそうなシンシアが居た。
ずっとあの場所に居たのは、わたしだった。
幼い頃からキャメロンが冗談を言って笑わせてくれて。
それを聞いてお兄様が、わたしに微笑んで……
お兄様とキャメロンと、わたし。
その3人だけの、大切な場所に。
どうして、シンシアが居るの?