もう誰にも恋なんてしないと誓った
26 嘆いても悔やんでも◆アイリス
お兄様は成人されてからは、ご自分のことを私と仰っていたのに、俺と戻された。
ただそれだけなのに、どうしてそれが、こんなに恐ろしく感じられるの……
「アイリスのことを考えてやれと、俺が嗜めたのを忘れたとは言わせない。
自分の立場を自覚しろ、アイリスを娶る気がないのなら、ふたりで会うのは止めないと、彼女の評判を貶めることになると。
俺はお前がアイリスを大切に想うなら、父上に口添えしようと思っていた。
だが覚えているか、お前はシンシア嬢と結婚したいから、もうアイリスとふたりでは会わないと言った。
それに加えて自分から、他の女友達とも清算するからとはっきり俺に宣言したんだ」
お兄様の顔も見られないくせに、大声を出して文句を言うキャメロンとは対照的に、静かに淡々と話すお兄様が怖かった。
「それを好きだ、邪魔しないからと言われて、抱いた?
お前は自分の発言にさえ責任が持てないのか?
1回だけなのは、お前達が会える機会を俺が潰したからだろう?
だからと言って、学院内で事に及ぶとはな。
俺はお前が例の女友達とも連絡を断っているようだとサイラスから聞いて嬉しく思っていたが、それが理由でアイリスに手を出したのか?
他では発散出来なくなったからと盛ったのか?」
「違う!……俺は婚約するまでの……」
「お前のような奴が弟だとは、聞いているこちらが恥ずかしくなる。
婚約するまで?
笑わせるな、それ以降もアイリスを都合よく使うつもりだったろう?
女性の大事な時期を奪い、結婚するまで、義務である後継が出来るまで、と引き延ばして。
領地ではシンシア嬢を大切にする振りをして、邪魔はしないと言ったアイリスを、王都で囲うつもりだったか?」
わたしにわざと聞かせるように、お兄様がキャメロンを問い詰める。
よく口にしていた女友達って、そんな関係だったの……?
あの女との婚約の為に、縁を切ったから発散出来なくて?
それじゃ、いつも抱き締める時にわたしに言った「可愛い、大好きだよ」って何だったの!
指摘されてすっかり狼狽えてしまったクズに、お兄様が止めを刺した。
「シンシア嬢は、お前からの謝罪は不要なので、会わないと。
それに……王家がお前を許さない。
グローバー家の価値を下げたお前には、子爵位は譲らないと父上も決定された。
この先はアイリスに対しての責任を取って、サザーランドに骨を埋めろ」
「シンシアが俺に会わないなんて、言うわけがないです!」
「そう思い込みたければ、勝手にすればいいが。
シンシア嬢からは幼馴染みの初恋を成就したお前達へ御祝いを贈りたい、どうぞわたしのことはお気になさらずに結ばれて欲しいと、添えられていた。
わかるか、彼女はお前との復縁を望んでいないのを、それで伝えようとしているんだ」
「……しっ……」
シンシアがわたしとキャメロンを御祝い……
そんな白々しい名目で、結婚をさせようとするなんて!
お金をねだるだけでは満足しないの?
そんな嫌がらせをして、親友のわたしを苦しめようとするなんて、酷すぎる!
先にわたしとの結婚を命じられていたキャメロンも、それを初めて聞かされたのだろう。
シンシアからの贈り物の本当の意味を知って、怒りなのか後悔なのか、言葉にならない声をあげた。
そして……信じられないことに頭を抱えて泣き出した。
ただそれだけなのに、どうしてそれが、こんなに恐ろしく感じられるの……
「アイリスのことを考えてやれと、俺が嗜めたのを忘れたとは言わせない。
自分の立場を自覚しろ、アイリスを娶る気がないのなら、ふたりで会うのは止めないと、彼女の評判を貶めることになると。
俺はお前がアイリスを大切に想うなら、父上に口添えしようと思っていた。
だが覚えているか、お前はシンシア嬢と結婚したいから、もうアイリスとふたりでは会わないと言った。
それに加えて自分から、他の女友達とも清算するからとはっきり俺に宣言したんだ」
お兄様の顔も見られないくせに、大声を出して文句を言うキャメロンとは対照的に、静かに淡々と話すお兄様が怖かった。
「それを好きだ、邪魔しないからと言われて、抱いた?
お前は自分の発言にさえ責任が持てないのか?
1回だけなのは、お前達が会える機会を俺が潰したからだろう?
だからと言って、学院内で事に及ぶとはな。
俺はお前が例の女友達とも連絡を断っているようだとサイラスから聞いて嬉しく思っていたが、それが理由でアイリスに手を出したのか?
他では発散出来なくなったからと盛ったのか?」
「違う!……俺は婚約するまでの……」
「お前のような奴が弟だとは、聞いているこちらが恥ずかしくなる。
婚約するまで?
笑わせるな、それ以降もアイリスを都合よく使うつもりだったろう?
女性の大事な時期を奪い、結婚するまで、義務である後継が出来るまで、と引き延ばして。
領地ではシンシア嬢を大切にする振りをして、邪魔はしないと言ったアイリスを、王都で囲うつもりだったか?」
わたしにわざと聞かせるように、お兄様がキャメロンを問い詰める。
よく口にしていた女友達って、そんな関係だったの……?
あの女との婚約の為に、縁を切ったから発散出来なくて?
それじゃ、いつも抱き締める時にわたしに言った「可愛い、大好きだよ」って何だったの!
指摘されてすっかり狼狽えてしまったクズに、お兄様が止めを刺した。
「シンシア嬢は、お前からの謝罪は不要なので、会わないと。
それに……王家がお前を許さない。
グローバー家の価値を下げたお前には、子爵位は譲らないと父上も決定された。
この先はアイリスに対しての責任を取って、サザーランドに骨を埋めろ」
「シンシアが俺に会わないなんて、言うわけがないです!」
「そう思い込みたければ、勝手にすればいいが。
シンシア嬢からは幼馴染みの初恋を成就したお前達へ御祝いを贈りたい、どうぞわたしのことはお気になさらずに結ばれて欲しいと、添えられていた。
わかるか、彼女はお前との復縁を望んでいないのを、それで伝えようとしているんだ」
「……しっ……」
シンシアがわたしとキャメロンを御祝い……
そんな白々しい名目で、結婚をさせようとするなんて!
お金をねだるだけでは満足しないの?
そんな嫌がらせをして、親友のわたしを苦しめようとするなんて、酷すぎる!
先にわたしとの結婚を命じられていたキャメロンも、それを初めて聞かされたのだろう。
シンシアからの贈り物の本当の意味を知って、怒りなのか後悔なのか、言葉にならない声をあげた。
そして……信じられないことに頭を抱えて泣き出した。