もう誰にも恋なんてしないと誓った
「マーフィー嬢からご紹介の話を打診された時は、サザーランド侯爵家と言えば辺境伯家ともご縁があって、わたしでは烏滸がましいとその時は断りました」
「……」
厳密に言えば、辺境伯家の血筋の方はオースティン様だ。
亡くなられたお母様が所縁の方で、キャメロンにはその血は流れていない。
けれどオースティン様は、そういった訂正をいちいちなさらない御方なのも知っている。
現に、今も何も仰らない。
「ですが後日マーフィー嬢が、キャメロン様の方から紹介して欲しいと仰っているからと言ってきて。
嬉しく思ったわたしは、父に頼む前に自分で調べようと思ったのです」
自分で調べる、ではなくスザナに頼んだのだけれど。
彼女は直ぐに調べてきてくれて。
キャメロンには、その様な関係の女性が何人か居ることを知った。
特に深いお付き合いをしていたのは学院の2学年上の先輩で既に卒業されていて、わたしが知らない女性だった。
キャメロン・グローバーが付き合う女性達には共通した髪と瞳の色がある。
それもスザナが教えてくれた。
全員が年上で、赤系統の髪と緑色の瞳の色白美人。
その色の持ち主がキャメロンのタイプであり、金髪に藍の瞳で、目立つところのない同い年のわたしは彼の好みではないことは、一目瞭然だった。
スザナは遊び人のキャメロンは駄目だと言い、わたしもそう思ったけれど、アイリスが言うには彼は既にお店を予約してくれているとのこと。
そのお店はとても人気があるらしくて、キャンセルしたら次の予約は中々取れないから絶対に都合をつけなさいねと厳命されて、張り切って立ち会ってくれるアイリスが凄く楽しみにしていることなどから、お断りをなかなか言い出せなかった。
それで一度だけなら会うのもいいかな、と思ってしまった。
母には状況も見て、わたしから話すから。
会うのは今日だけのことかも知れないし、貴女はそれまで黙っていて、とスザナには頼んだ。
「では、やはり女性達との関係も知っておられたのに、キャメロンを?」
「はい。お会いしたら、彼はとても感じが良くて。
実際に会えば彼の方からお断りをされる可能性も考えておりましたが、何故かそれからもお誘いをいただいて。
わたしはいつしか、わたしの知らない女性とのことなら、受け入れても良いのではないか。
少なくとも、わたしの前でそれを隠し通してくれるのならばと」
「それで、弟の不貞の内容証明には把握していた彼女達の名前はなく、アイリス・マーフィーだけを?」
「わたしと知り合う以前の関係に、口を出すつもりはございませんでした」
わたしの応えにオースティン様は驚かれたようだった。
「ですが、紹介されて2ヶ月後くらいの、3月半ばのことでしょうか。
侍女からキャメロン様が例の女性と会わなくなったようだと報告されたのです」
「3月半ばの……」
その辺りのご事情をオースティン様はご存知なのかもしれないと思ったのは、それを聞いた途端にわたしから目を逸らされたからだ。
人は何か記憶を辿ろうとする時、一瞬視線を遠くへやる。
もしかしたら、キャメロンが女性達と別れるように、オースティン様が動いてくださったのだろうか。
「……」
厳密に言えば、辺境伯家の血筋の方はオースティン様だ。
亡くなられたお母様が所縁の方で、キャメロンにはその血は流れていない。
けれどオースティン様は、そういった訂正をいちいちなさらない御方なのも知っている。
現に、今も何も仰らない。
「ですが後日マーフィー嬢が、キャメロン様の方から紹介して欲しいと仰っているからと言ってきて。
嬉しく思ったわたしは、父に頼む前に自分で調べようと思ったのです」
自分で調べる、ではなくスザナに頼んだのだけれど。
彼女は直ぐに調べてきてくれて。
キャメロンには、その様な関係の女性が何人か居ることを知った。
特に深いお付き合いをしていたのは学院の2学年上の先輩で既に卒業されていて、わたしが知らない女性だった。
キャメロン・グローバーが付き合う女性達には共通した髪と瞳の色がある。
それもスザナが教えてくれた。
全員が年上で、赤系統の髪と緑色の瞳の色白美人。
その色の持ち主がキャメロンのタイプであり、金髪に藍の瞳で、目立つところのない同い年のわたしは彼の好みではないことは、一目瞭然だった。
スザナは遊び人のキャメロンは駄目だと言い、わたしもそう思ったけれど、アイリスが言うには彼は既にお店を予約してくれているとのこと。
そのお店はとても人気があるらしくて、キャンセルしたら次の予約は中々取れないから絶対に都合をつけなさいねと厳命されて、張り切って立ち会ってくれるアイリスが凄く楽しみにしていることなどから、お断りをなかなか言い出せなかった。
それで一度だけなら会うのもいいかな、と思ってしまった。
母には状況も見て、わたしから話すから。
会うのは今日だけのことかも知れないし、貴女はそれまで黙っていて、とスザナには頼んだ。
「では、やはり女性達との関係も知っておられたのに、キャメロンを?」
「はい。お会いしたら、彼はとても感じが良くて。
実際に会えば彼の方からお断りをされる可能性も考えておりましたが、何故かそれからもお誘いをいただいて。
わたしはいつしか、わたしの知らない女性とのことなら、受け入れても良いのではないか。
少なくとも、わたしの前でそれを隠し通してくれるのならばと」
「それで、弟の不貞の内容証明には把握していた彼女達の名前はなく、アイリス・マーフィーだけを?」
「わたしと知り合う以前の関係に、口を出すつもりはございませんでした」
わたしの応えにオースティン様は驚かれたようだった。
「ですが、紹介されて2ヶ月後くらいの、3月半ばのことでしょうか。
侍女からキャメロン様が例の女性と会わなくなったようだと報告されたのです」
「3月半ばの……」
その辺りのご事情をオースティン様はご存知なのかもしれないと思ったのは、それを聞いた途端にわたしから目を逸らされたからだ。
人は何か記憶を辿ろうとする時、一瞬視線を遠くへやる。
もしかしたら、キャメロンが女性達と別れるように、オースティン様が動いてくださったのだろうか。