もう誰にも恋なんてしないと誓った

最終話 焦がれるような恋ではなく◆シンシア

 オースティン様が申し出てくださった求婚をお断りした。

 ご自身も望まれていたとは思わない。
 実際にオースティン様はあっさりと話題を変えられたので、わたしの方もこの話を引きずってはいけない。


 その話題とは。

「1年程前から、後継予定者の集まりを催しています。
 もしカーライル嬢が興味をお持ちでしたら、一度参加されてみませんか?」

「後継予定者……」

「領地持ち、領地無しに関係なく。
 また、女性も何人か参加しています。
 皆、学院生なので普段は週末に集まっていましたが、夏休みに入ってからは、有志でほぼ毎日集まっているようです。
 私も皆に声を掛けた手前、こちらに帰ってきた時には出来るだけ参加を心掛けています。
 勉強熱心な者が多く、私も刺激を貰っています」


 正直なところ、そのお誘いには興味がある。
 これからの貴族の在り方等、同じ立場の、同じ年頃の方達と意見の交換や……共に学びたいと思う。
 けれど主催がオースティン様なら……


 破談になったお相手のご兄弟と、これ以上親しくなるのは、あまり褒められた行為ではないと思う。


 これが同じ様に後継者教育を受けていたオースティン様が、わたしのことを気遣ってくださってのお誘いだとわかっているけれど、素直にそれを受け取れる関係ではないのを、失礼にならないようにお断りをするのはどうしたらいいのか……
 わたしは口ごもってしまった。


 けれど言葉にしなくても、オースティン様は察してくださった。



「……わかりました。
 そうですね、私達はその、仲間のような関係にならない方が賢明ですね」
 
「せっかくのお誘いを無下にして申し訳ございません」

「では、しつこいようで恐縮ですが、無下にされないお誘いをさせてください。
 レスター伯爵を、是非ご紹介させてくださいませんか?」

「ミュリエル・ドーン・レスター伯爵様ですか!」

「はい、あの方には前々からお若いレディをご紹介して、とお願いされていました。
 カーライル嬢のご都合を教えていただいたら、伯爵の日程をお聞きしておきます」


 レスター伯爵は、この国では1番最初に伯爵位を継がれた女性だ。
 一度お話を伺えたらと憧れていた。
 まさかオースティン様がレスター様とお知り合いで、仲立ちをしてくださるとは思ってもみなかった。


 その喜びが顔に出ていたのだろう。
 オースティン様が可笑しそうに笑っていらした。


「私がプロポーズした時よりも、遥かに嬉しそうな表情をされましたね。
 率直に申し上げて、私は傷付きました」


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