もう誰にも恋なんてしないと誓った
 領地へ戻る前に、わたしはレイドとスザナにエドワード殿下の元へ戻ってほしいと伝えた。


「わたくしも覚悟を決めました、とお伝えくださいませ。
 誰かに頼ろうとせず、自分の責任を全う致しますと」


 レイドが殿下の命で執事として仕え、護衛として守ってくれていた時は普通に話していたけれど、これからは伯爵家子息レイナルド・パーシー卿として接しなければならない、と言葉遣いを改めた。


「パーシー様にもシュザーナ様にも、本当にお世話になりました」

「……承知致しました。
 カーライル嬢がこれからもお健やかに過ごされますよう、お祈り申し上げます」

「お嬢様、わたくしは……」

「もうお嬢様はお止めくださいませ、シンシアとお呼びいただけますか。
 シュザーナ様には、殿下のご命令とは言え、同格の年下の娘に仕えていただいたこと、本当に申し訳なく思っておりました。
 ついお姉様のようだと甘えて頼りきりになってしまいました。
 今更ですけれど、本当に感謝しかございません」


 シュザーナ様にはお付き合いしている方がいらっしゃることは知っていた。
 きっとわたしの婚約が決まり、ハミルトンを離れてからお話を進められるご予定だったのだろう。


「シュザーナ様も、末長くお幸せになられますよう、お祈り申し上げます」

「お……シンシア様も必ず……
 これからはもう……あちらを気にして……
 決して目立たないように……と。
 わざと装いを地味になさらないで……くださいませ……」



 そうしてレイナルド卿はエドワード殿下の元に戻り、シュザーナ様はわたしの侍女を辞め、恋人とご結婚された。


 わたしはひとりで、行動するようになった。

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