断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 こっちの気を知ってか知らずか、山田はまた正面向いて入り口を背中でふさいだ。
 時々すきま風が吹くけれど、やっぱり中はあたたかい。

(山田って、悪いヤツではないんだよね)

 ただ、どうしても好きになる対象には思えなくって。
 トモダチとかだったら、ずっとたのしく付き合っていけるんだと思う。でも王子相手にそんなこともできないし。

 それなのに、山田の気持ちがちょっとうれしいだとか、そんなこと思ってる自分もいたりして。

(なんかズルいな、わたし……)

 罪悪感。こんなモノ、わたしが抱える必要なんてある?

 不条理で、意味もなくモヤモヤしたままだったけど。
 それはそれとして、さ。山田のお陰でこうして安心できてるワケだし? ちょっとくらい、恩返ししなきゃってことで。

「シュン様……でしたらせめて、後ろから温めることだけでもお許しください」

 間に魔石カイロを敷き詰めて、わたしは山田の背中に抱きついた。
 一瞬びくっとなった山田だったけど、そのままわたしの好きにさせてくれている。

「ありがとう。ハナコはやさしくて温かいな……」

 ごめんね、山田。
 やっぱりわたし悪役令嬢みたい。

 そんなこと思いながら瞳を閉じて。

 次に気づいたときにはもう、自分の部屋のベッドの上だった。

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