断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 学園ではみんなに気さくに接してる山田だけど。やっぱり一国の王子なんだって改めて思ってみたり。

 わたしも立ち上がって令嬢の所作で礼を取った。

「王子殿下、本日はお招きいただきありがとうございます」
「そんなに堅苦しくしないでくれ、いつも通りシュンでいい。ハナコ、元気そうでよかった。やはり手紙だけでは安心できないからな」

 近衛兵を遠くに追いやると、山田はわたしの真横にわざわざ椅子をずらしてきた。しかもすかさず手を握ってくるし。
 使用人が綿密に準備した席なんだから、その努力をあっさり踏みにじるんじゃないっつうの。

 王子として周りにかしずかれても、行動は学園にいるときと変わんない。
 久しぶりのお城でちょっと気が張ってたけど、山田がいつも通りでなんだか気が抜けちゃった。

 とは言え、山田のウザ攻撃を撃退するのも普段以上に気を使わなくちゃなんなくて。近衛兵に不敬だとか言われたりしたらマズいからね。

「シュン様、これではせっかくのお紅茶がいただけませんわ」
「すまない。久しぶりにハナコに会えたものだからつい……」

 言い訳は分かったから早くこの手を離せ。
 そう口に出して振りほどけないのがもどかしい。

 っていうか、そこのメイドたち。
 生温かい目でこっち見るのは今すぐにおやめなさい。
 その間にも山田の指が、わたしの手を楽しむように撫でまくってる。

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