断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 そのとき、すんっと未希の顔がまったくの無表情になった。

(やばっ、あれは押してはいけないスイッチに触れたときの顔だっ)

 呪いの日本人形を前に、ゆるんだ口元を引きしめる。怖すぎて、まだそこにいた山田に視線をそらした。

「え、なんで山田まで……」

 山田はなんていうか、口に薔薇の花を一本くわえてベルサイユ宮殿の前でポーズ取ってそうな、そんな奇抜な格好をしている。
 つまりは王子サマ的な? 瓶底眼鏡は相変わらずだけど。

「なに、ふたりとも、仮想パーティーにでも行くの?」

 今はハロウィンの時期でもない。山田の衣装なんかはずいぶんとお金がかかってそうだ。

「パーティーなら一年後、卒業の折に行うが……。ハナコが望むなら、特別に(もよお)してもかまわないぞ?」
「は? いや、ケッコウです」

 上からモノ申されて、思わず敬語で返してしまう。ていうか、何ひと様の名前呼び捨てにしてんだよ。ぎりっと睨もうと首をひねると、また頭に激痛が走った。

「いっ」
「ハナコ! まだ無理をしては駄目だ」

 背中に回された山田の手を払いのけたいのに、痛みがそれを許さない。ズキズキ鳴るこめかみをぐっと両手で抑え込んだ。

 ふと着ているブラウスが目に入る。パフスリーブの膨らんだ袖が手首できゅっと(しぼ)られている。普段なら絶対に選んだりしないふりふり系のブラウスだ。

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