断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「ビスキュイに会うのは本当に久しぶりなものですから」
「ああ、ビスキュイもハナコに会えてうれしそうだな」

 ぺたりと座り込むわたしの横に、山田も腰を下ろした。
 地面に直接座るだなんて、王子がそんなことして大丈夫なの?
 っていうか近すぎる。もっと適切な距離ってもんがあるでしょうが。

 そんなわたしたちの間に、ビスキュイが無理やり割り込んできた。真ん中にすっぽりハマりこんで、しっぽを振りながらわたしと山田を交互に見上げてくる。

 ナイス、ビスキュイ!
 近衛兵なんかよりもずっと役に立つじゃないか。
 真夏のモフモフは暑苦しいけど、山田のウザさに比べたら可愛いレベルだよね。

 ってか、ちっとも暑くないような? 
 木陰を出て今は真夏の直射日光浴びている。なのにクーラーみたいな涼しい風が、ずっとそよそよ吹いてきてるし。

「ときにハナコ、暑くはないか?」
「ええ、とても心地よいですわ」
「そうか、上手くいっているようで安心した」
「もしかしてこれはシュン様が……?」
「ああ、この庭一帯に冷風の魔法を流してみている。魔力制御の鍛錬にはちょうどいいな」

 そういやメイドも近衛兵たちも、みんな汗ひとつかいてない。
 この広い庭を持続的に冷やすとなると、相当な魔力と集中力が必要なハズ。でも山田は平然とした顔のままだし。
 山田ってホントに優秀な王子なんだな。性格はなんとも残念だけど。

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