断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「さすがはシュン様ですわ! お陰でビスキュイを心置きなく可愛がれます」
「む、そうか」

 これだけ持ち上げられたら、山田だって引き下がるしかなくなるよね。念のため、スキを与えないようにビスキュイを腕に抱え込んだ。

「仕方がないな。今日だけはビスキュイに(ゆず)るとするか」

 やった、山田が諦めた!
 今日だけと言わず、永遠に譲ってくれるといいんだけど。そして雪山での約束もこのまま有耶無耶(うやむや)になってしまえ。

「ハナコとの約束は機会を改めまた仕切りなおそう」

 仕切りなおさんでいいっ。
 大声で突っ込めないのが口惜しいんですけど。

「ほほほ、シュン様、ご無理なさらずですわ。ね、ビスキュイもそう思うでしょう?」
「わふんっ」

 いい返事だぞ、ビスキュイ。それにしてもなんて賢いワンコなんだろう。
 モップヘアをなでくり回すと、また顔をべろんべろんに舐めまわされた。山田に匂いをかがれるよりは、数億倍ましって感じ。

「命の恩人に会えてうれしいのは分かるが……ビスキュイ、ハナコを譲るのは本当に今日だけだぞ?」

 山田がしょうがないといった感じの息を漏らした。
 ってか、命の恩人ってどういうこと?

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