断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 ビスキュイに会ったのは、初めてお城に行った日のことだ。確かわたしが十歳くらいのときだったかな?
 本当のこと言うと、あの日ビスキュイには近づきもしなかった。だってビスキュイってば、怪我をしていて触ってほしくなさそうだったから。

「シュン様、命の恩人とはどういうことでしょうか?」
「ハナコは知らなかったのかもしれないが、あの頃のビスキュイは急に攻撃的になっていたのだ」
「このビスキュイが……?」

 人懐っこそうな瞳が、今もモップ毛の間からのぞいている。

「ずっと穏やかな性格だったのだが。わたしも一度噛みつかれそうになってだな。子犬のころから育てていたのに、当時は相当ショックに思ったものだ」

 遠い目をして山田はビスキュイの頭をなでた。

「あの日ハナコがビスキュイの怪我を指摘しなかったら、今頃ビスキュイは殺処分されていたことだろう」
「まぁ、そんなことが……」

 痛みで攻撃的になってたってこと?
 まぁ、このモップみたいな毛むくじゃらしてたら、ちょっとした怪我なんて外から見ても分からないよね。

「今こうしていられるのもハナコのお陰だ。ビスキュイだけではなく、わたしも本当に感謝している」
 穏やかに微笑まれ、ちょっとたじろいだ。

 山田がわたしを好きになったキッカケって、もしかしてコレだったりする?

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