断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「うれしいお言葉ですが……そのように言っていただくのは心苦しいですわ」

 あいまいだった記憶が、今急に蘇ってきた。
 なんでビスキュイの怪我に気づいたかって言うと、あのときわたしも靴擦(くつず)れしててめちゃくちゃ痛みを我慢してたんだ。
 多分、ビスキュイから同じ空気を感じ取って、それで気づいただけなんだと思う。

「恥ずかしながらあの日わたくしも足を痛めておりましたの。わたくしは痛みをきちんと我慢できているのに、お前はそんなふうに不機嫌にしているのね。内心ではそうビスキュイを馬鹿にしていたのですわ」

 初めてお城に行くってんで、ハナコってば高いヒールの靴を履くって言って聞かなかったんだよね。慣れない靴はやめた方がいいって周りは必死に止めてきたんだけど。
 そんな経緯もあって足が痛いって言い出せなかったんだ。そこにきて怪我したビスキュイは素直に痛そうにしててさ。
 自分エライって思いたいがために、お前は低俗な犬だから我慢もできないのねって(さげす)んでたってわけ。

「ですからわたくし、命の恩人と呼ぶには値しませんわ」
「いや、ハナコは立派な恩人だ。結果的にビスキュイを救ったのだから」
「わふんっ」
「そうか、ビスキュイもそう思うか」

 なぬ? ビスキュイお前、ここにきて山田に寝返るんか。
 せっかく山田ん中で美談になってるわたしの行いを、黒歴史に塗り変えようって思ったのに。
 恩を(あだ)で返すだなんてひどい仕打ちなんですけど。

「そうだとしても、シュン様が思われるほどわたくしはできた人間ではございませんわ」
「……ハナコは本当に謙虚だな。実に好ましい」

 ちょっ、逆に好感度上がってない!?
 すべてが裏目に出てる気がするのはどういうこった?

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