断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 ぎゃっ、ビスキュイ!
 わたしの顔を舐めたその口で、山田をべろんべろんするんじゃないっ。
 そしてさらにわたしを舐めようとしてくるなっ。

「おほほほ、分かったから少し落ち着きなさい」

 交互に舐めようとしてくるビスキュイを押しやると、今度は集中的に山田を舐めだした。勢いで瓶底眼鏡が斜めにずれる。
 はっ、何気に今チャンスじゃない?

「たいへんですわ、シュン様の眼鏡がビスキュイのよだれで……!」

 浄化魔法を使われる前に、さっと眼鏡を奪い取った。
 未希に言われたミッションくらいは、せめて完了しときたい。何の収穫もないまま帰ったら、ただ好感度上げただけの一日になっちゃうもんね。

 さぁ、山田の素顔を拝見だ!
 って思ったら、山田は手探りで芝生の上を探ってる。そんなにうつむいてちゃ、肝心の顔が分からないんですけど。

「ハナコ? それがないとわたしは何も見えないんだ」

 地面に手を突いたまま、山田がゆっくりと顔を上げた。その様子を固唾(かたず)を飲んで見守ってたんだけど。

「ひっ!」

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