断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 思わず悲鳴を上げたわたしを許してほしい。
 だってそこには、ものすっごい恐い目つきをした山田がいたんだもの。
 三白眼(さんぱくがん)って言うの?
 それこそ任侠(にんきょう)映画に出てきそうな三下の殺し屋って感じでさ。

 別に眼鏡取ったら美形だなんて、健太が言ってたみたいに期待してたわけじゃないんだけど。
 あまりにも斜め上行く山田の素顔に、さすがのわたしも言葉を失っちゃった。

 手探りでビスキュイの元にたどり着くと、山田はモフ顔を両手で挟み込んだ。

「ハナコ……ずいぶんと毛深くなったのだな?」
「シュン様、それはビスキュイですわ」

 どんだけ見えてないんだよ。
 鼻先をくっつけて至近距離で見つめ合ってるってのに。

「少しお待ちいただけますか? 今レンズを拭きますから」
「すまない、手間をかける」

 ってか、分厚いレンズだな。
 言った手前、形だけこちょこちょと拭き取った。
 なんだか汚れが引き伸ばされただけのような気がしないでもない。犬のよだれってなんでこんなにねちょねちょしてんの?
 ま、いっか。見えづらかったら自分で浄化魔法をかけるだろうし。

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