断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 最後に山田が浄化の魔法をかけてくれた。おかげで草まみれだったドレスも、きれいサッパリ元通り。

「ハナコ」

 名残(なごり)惜しそうに片手で頬を包まれる。
 ってか、気安くさわんないでほしいんですけどっ。
 存在忘れかけてたけど、メイドたちにずっと生温かい目で見られてたみたいだし。
 これ以上、変な目を向けられるのは勘弁してほしい。

 そんなわたしの心の叫びをよそに、山田は耳元に唇を寄せてきた。
 ふっと笑うと、下唇のきわっきわを親指でゆっくりとなぞってくる。

「いつかここに直接触れて見せる。ビスキュイを通してではなく、な」

 ああ、もう! メイドたちがきゃっとか言って赤面してるじゃんっ。
 瓶底眼鏡に言われたって、こっちは鳥肌もんなんだよっ。

 最後の最後で山田にぶちかまされて、疲労困憊(こんぱい)のまま庭園を出た。
 案内役の近衛兵に連れられて、お城の中をてくてく歩く。
 お城を出るまではまだまだ気は抜けないけど、行きよりは周囲の反応がやさしい感じ。

 っていうか、そこの近衛兵。
 二ヨつくのいい加減やめてくんない?

 山田のせいで、お城で変なウワサが立ちそうで怖いんですけどっ。
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