断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 ヒロインとして転生して、長谷川もこりゃないよって思ってるんだろうな。せっかくチート持って生まれたんだから、もっと上手く立ち回ればよかったのにさ。
 思えばユイナの行動ってとんちんかんなことばっかだったよね。前世でも勉強はできなそうだったけど、打算とか損得勘定は誰よりも抜きん出てたってのに。

「姉上、そのことなんだけどさ……」

 物憂(ものう)げな表情のケンタが、手を添えて耳に顔を寄せてくる。
 この年で弟と内緒話とか、なんか逆に新鮮なんですけど。

「ユイナの嫌疑(けんぎ)が実は俺と姉上にも波及してて……」
「えっ」

 大声が出そうになって、あわてて口元を手で隠した。

「それってどういうこと?」
「夏休みに姉上が城に呼ばれたことあっただろ? その帰りに魔力切れのユイナを家に連れて帰ってきたの覚えてる?」

 ああ、そんなこともあったっけ。
 走る馬車の前に、いきなりユイナが転移魔法で現れたんだよね。

「あの日、ユイナのヤツ、城に不法侵入してたらしいんだ」
「不法侵入? ユイナがお城に?」
「うん。それで警備の兵に追われて逃げているところを、姉上に助けられたって感じみたくて」

 な、なんですと?
 ユイナ、ヒロインのくせして何やらかしてるんだっ。

「それでわたくしたちに共犯の疑いが……?」
「でも心配しないで。俺が事情聴取受けて、誤解だってことは分かってもらえたから」
「本当? ケンタの将来に傷ついたりしてない?」

 わたしがユイナを連れて帰ったばっかりに、健太まで巻き込んでたなら申し訳なさすぎる。

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