断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 大きな手で頭を抱き寄せられて。
 なによ、その命令口調。でも髪に触れる手つきは意外にやさしいかも。

「解けないのなら少しくらい切っても構わなくてよ?」
「こんな綺麗な髪をか? バカを言うな」

 本当にバカにしたように鼻で笑われた。
 なんなのこの男、ちょっとムカつくんですけど。

「取れないな……」

 そうつぶやくと、男は大きなリボンの髪留め(バレッタ)をいきなりぱちんと外した。
 勝手に取らないでよ。しかもすごく手慣れてるし。

「この方がセクシーだな」
「なっ」

 楽しそうにわたしの長い髪を両手でほぐしていく。
 やっぱり手慣れた感じだし。こいつ相当の遊び人と見た。

「いい加減、離しなさい!」
「なんだ、こっちは褒めているんだぞ? しかも髪を切らずに済んだんだ。礼のひとつも言えないとは、とんだじゃじゃ馬娘だな」
「なんですって。わたくしを誰だと思って……!」

 ぎりっとにらみ上げようとして、目に飛び込んできたのは青い瞳をした金髪の男で。
 見覚えのあるその顔に、不覚にも大口を開けて固まってしまった。
 だってこの男、もしかして。

「ロレンツォ・リッチ……?」

 ここにきて最後の攻略対象がお出ましとは。
 ってか、めんどう事にならないといいんですけどっ。
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