断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「やはり綺麗な髪だな」
「お(たわむ)れを」

 あわや髪先に口づけられそうなところを、一歩下がって髪を取り戻した。
 それ以上気安く触れさせるもんですか。
 未希直伝のスンとした顔を向けると、ロレンツォは面白そうにわたしを見やって来る。

「いいな、その目。気に入ったぞ」

 なにが気に入ったぞよ。ゲーム進行そのままのセリフ吐かれても、こっちはうれしくもなんともないんですけど。
 ってかこのシーン、まんまヒロインイベントじゃんっ。

 攻略対象の中では、留学生のロレンツォ・リッチがいちばん好みの顔だったんだよね。だからロレンツォルートだけは内容を自分で覚えてるんだ。
 と言っても序盤で飽きちゃったから、ここから先のことはどんな展開か記憶にはないんだけど。

「先ほどはご無礼いたしました。髪も(ほど)いてくださってありがとうございます。ではわたくしはこれで失礼いたします」

 早口で告げて形ばかりの礼をとる。
 いけ好かない相手でも、ロレンツォは他国の王子様だし。上辺だけでも礼儀は尽くしておかないと。

「待て、ハナコ」
「まだなにか?」
「明日の放課後、教室まで迎えに行く。楽しみに待っていろ」

 ぎゃっ、なに勝手に手に口づけてんのよっ。
 とっさに手を引いたけど、ロレンツォはニヤっと笑って背を向けた。

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