断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「今日の茶うけはたい焼きですじゃ。温めなおしたゆえ熱いうちに食べてくだされ」

 自分の椅子に座るロレンツォに文句を言うでもなく、リュシアン様は丸椅子に腰かけた。
 ヨボじいを装ってるけど、やっぱりリュシアン様は王者の風格が漂ってるな。

「今日は番茶ですのね。スモーキーで良い香り」
「さすがハナコ嬢。そちらも熱く煎じておりますゆえ、火傷せぬようお気をつけくだされ」
「ふふ、皮がパリパリ。あんこの粒もふっくら炊けていてとっても美味しいですわ」
「さ、そちらの(ぼう)も遠慮せずに」
「ちっ、仕方ねぇな……む、これは旨いな」

 ロレンツォってば、瞳を輝かせて二個目のたい焼きにまで手を伸ばしてる。
 こんな子供っぽいトコロもあるんだ。

「そろそろ次の授業が始まる頃合いですな。おふた方はもうお戻りなされ」
「先生、今日も診てくださってありがとうございました」
「いやいや、何事もなくてわしも安心しましたぞ」

 リュシアン様に見送られてロレンツォと保健室を出た。
 めんどう事になる前に、さっさと教室に戻ろうっと。

「待て、ハナコ」
「何ですの?」

 だから腕をつかまないでったら。ほんと礼儀知らずなオトコでイヤになる。

「わたくし、お礼も言えない殿方に付き合ってるヒマはございませんの」

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