断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「わふんっ」

 ビスキュイの声が聞こえたその瞬間。
 手足にぬるりと何かが巻き付いた。

「えっ、なにっ」

 まるで見えない触手のように、巻き付くソレはわたしをふわりと高く持ち上げた。
 空中でからめ取られたまま身動きひとつ取れなくなる。
 はっと見やると、時計の砂はとっくに落ち切って。

 かがみこんでいた山田が、ゆらりとその場で立ち上がった。
 瓶底眼鏡の真ん中を指で押し上げ、無慈悲な言葉をわたしに告げる。

「時間だ、ハナコ」

 山田の人差し指が、ゆっくり下に向けられて。
 それと同時にわたしの体も、地面に向かって降ろされていく。

 じたばたと動いても、触手にやんわりと足を曲げられしまう。わたしのひざはどんどん芝生に近づいていった。

(え、うそ、やだ、やだ、やだっ)

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