断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 こわ過ぎて固まってるわたしの顔を、眉根を寄せた山田がねめつけてくる。
 だからその顔、近づけてくんなって! やっぱムリ、圧倒的にムリ過ぎるっ。

 椅子の背もたれに追い詰められて。
 あれ? 近づくにつれて、なんか山田の顔が変わってくような?
 錯覚? まぼろし? イリュージョン?

「ああ、ハナコ……ハナコの瞳は本当に美しいな……」

 ぽろぽろと涙をこぼしながら、鼻先がくっつきそうな近さで山田がしあわせそうに目を細めた。
 ってか、え? 夢で見たイケメン天使?
 え? え? なんでど真ん中(ストライク)の天使のアナタが目の前にいらっしゃるの?

「最後に間近でハナコの顔を見られてうれしかった。ありがとう。もうわたしに悔いはない」

 そっとわたしの頬に触れた天使様が、うっとりするような笑顔になって。
 わたしはいま夢見ているんだろうか? 魔力切れして気絶したのかも?

 その天使の顔が離れるにつれて、やさしげな瞳が少しずつしかめられていく。
 遠のくほどにその顔は、極道の山田に戻っていって。
 最後にすちゃっと眼鏡をかけると、そこにはいつもの瓶底眼鏡の山田がいた。

「おじい様、あとのことはよろしくお願いします」
「うむ、ハナコ嬢はこのわしが責任を持って送ってくるゆえ、シュンよ安心するといい」

 うなずいた山田は振り返ることもなく背を向けた。その後ろをビスキュイがしっぽを振りながらついていく。

 ってか、アレは誰? アレはだれ? アレはダレ―――――っ!?
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