断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 ああ、なるほど。貴族たるもの目下の人間に舐められちゃアカンって感じか。
 そういや「威厳(いげん)ある笑い方」とか言って、あの高笑いを毎日鏡の前で練習してたような?
 ってか、まわりの大人、そういう子供の奇行は全力で止めようよっ。

「今のお嬢様はあの頃の天使に戻ったよう思います。まぁ、わたしとしたことがおしゃべりが過ぎました」
「いいのよ。話してくれてありがとう」

 にしても天使のハナコか……。
 言われてみれば、ちっちゃいときは庭で花摘んだり、小鳥に餌をあげたり虫の観察なんかもよくしてたっけ。

(ぬをっ。天使って言われて、山田のことを思い出しちゃったよっ)

 決闘の日以来、山田の顔がずっと頭から離れてくれなくて。
 極道顔の山田は、視力が悪すぎて怖い目つきになってただけなんだよね。
 間近で見たあのイケメン天使が、本当の山田の素顔だったんだ。それが分かったところで、今さら後に引けるわけもなく。

 わたしの留学は国家間で話が進んでるし、とてもじゃないけどやっぱりやめますなんて言い出せる雰囲気じゃない。
 理想のイケメンを探すため、ようやく手にした留学だったけど。
 それなのに理想の天使はとっくの昔にそこにいて。

(卒業式の婚約者指名イベント、山田は誰を選ぶのかな……)

 ゲームでは王子がヒロインを指名してエンディングを迎えるけど、今の世界線じゃユイナは完全に候補から外れてるはず。
 決闘なんてせずにあのまま山田の手を取ってたら、わたしが結婚相手に選ばれてたんだろうな。
 そんなこと思っても、時間を巻き戻すことなんてできないし。

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