断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 堂々巡りの思いを抱えたまま、翌日旅行の件でお城までリュシアン様に会いに行った。
 何度も素直な気持ちを打ち明けようと思ったけど、最後まで言い出せず仕舞い。
 留学の詳しい計画なんかも話題に出て、途中イタリーノ国の大使に挨拶したりして。警備の兵はたくさんいるし、個人的な相談なんてする余裕もなくあっという間に帰る時間になっちゃった。

「次に会うのは旅行の当日じゃな。かっかっか、わしも今から楽しみで仕方ないわい」

 リュシアン様とお城の廊下を歩いてたら、遠目にイタリーノ大使といる山田が見えた。
 一瞬目が合って、お城だからと公爵令嬢として礼を取ったんだけど。
 いつもみたいにわたしに駆け寄ってくると思ったのに、山田はそのまま大使を連れて行ってしまった。

(今は外交中だもんね。学園にいるときみたいには振る舞えないか)

 ちくっと痛んだ心を、そんな言葉で慰めた。
 でも決闘の日以来、山田は「適切な距離」を保つようになっていて。学園でも軽くあいさつをするだけで、ほかの生徒に対する対応とまったく変わらなくなってしまった。

(「なってしまった」ってなんなん?)

 早くそうなってくれって、ずっと望んでたはずなのに。
 そっけない山田の態度に傷ついてるなんて、一体どういうコトよ?

 結局リュシアン様に何も話せないまま、膨れ上がったモヤモヤと一緒に帰路についたわたしだった。
< 352 / 413 >

この作品をシェア

pagetop