断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 え? 山田なに鼻にタオル当ててるの?
 もしかしなくても、それって今わたしの汗拭いてたタオルだよね?

(す、スンスンすなぁっ)

 においをかいでいることが分かって、絶叫しそうになる。
 くらくらしすぎて、幸か不幸か声にはならなかったけど。

 うーあー、瓶底眼鏡の上に変態だとか、もうサイアクだ。

 バタンとうしろに倒れ込んで、そのまま柔らかい枕に沈み込んだ。どうしたらこいつと縁が切れるんだ?

「可哀そうに。こんなに指もほっそりしてしまって」

 ここんとこ水分しか摂ってなかったからね。

 ってか、どさくさにまぎれて手の甲撫でてくんな!
 ヤバい、余計に熱が上がってきた。酸欠で息も絶え絶えになってくる。

「苦しいか?」

 ええ、とっても。
 全部お前のせいだけどな。

「せめて回復魔法がかけられたらいいのだが……」

 回復魔法は本人の生命エネルギーを利用して治癒を促すものだ。
 わたしみたいに弱っている者に使うと、余計に症状を悪化させてしまう。

「何もしてやれない自分が不甲斐ない……ハナコ、本当にすまない」

 悲痛な声を出す山田は、まるで人の死にぎわに立ち会っているかのようだ。

 ち、縁起でもない。
 でもそうか。何気にいい手を思いついちゃった。

 作戦その四、「体が弱すぎる設定」だ。

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