断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 言いかけて強引に引き寄せられた。
 気づいたら山田に壁ドンされていて。

「ほかの男など見なくていい」

 誰もいない展望台。
 ふたりの隙間を春風が吹き抜けて。

「ハナコ、ひとつ確かめておきたいことがある」
「確かめておきたいこと?」

 真剣な声音で、ああと山田はうなずいた。

「イタリーノに出立するはずだったあの日、ハナコはなぜわたしの元に来たのだ?」
「それは……なんだかイヤな予感がして、どうしてもシュン様に会いに行かなくてはと思いましたの」
「虫の知らせというわけか?」

 ロレンツォルートだと山田が大使に殺されちゃうかもだから。なんて話はできないし。
 胸騒ぎがしたってことで、ここは納得してもらうしかないよね。

「分かった。それでだ、ハナコ。もうひとつ聞いてもいいだろうか……?」

 まるでこっちが本題みたいに、緊張した雰囲気で問いかけられる。
 閉じ込められた腕の間で、不思議に思いつつ笑顔を向けた。

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