断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 わたしは生まれたときからずっと誰かを探していた。何かが物足りなくて。心のどこかに大きな穴が開いていて。
 今生で初めてハナコに出会ったとき、それがハナコであったとわたしは確信した。
 天使のようなハナコの寝顔は、わたしの心の欠落を一瞬ですべて埋めてしまったのだから。

 わたしは王子として何不自由なく育てられてきた。
 溢れる才能ゆえに、子供のころは他人を見下し人生をナメ切って生きていたくらいだ。

 しかしハナコとの出会いがわたしのすべてを変えた。
 イージーモードの人生の中で、ハナコだけがわたしの思い通りにならない存在だ。

 だがわたしは何があってもハナコが欲しい。
 ハナコだけが必要で、ハナコだけいれば他には何もいらなくて。

 この湧き上がる想いがどこからくるのか、正直自分でもよく分からない。
 それでもわたしにはハナコが必要だ。
 ハナコのいない人生など、生きている意味はありはしない。

「今年は社交界デビューもありますし、忘れられない一年になりそうですわ」
「うむ、デビューの際はわたしにエスコートさせてほしい」
「ですがわたくしたちはまだ婚約関係ではありませんし……」
「いずれそうなるのだ。ハナコとのことを知らしめるいい機会だ。なにも問題ない」

 無事平穏に卒業を迎えていたのなら、わたしの正式な婚約者としてハナコを皆に紹介できただろう。
 それが一年延長になってしまった。
 長い長い一年だ。

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