断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「わたくしちょっと息苦しくって。座らせていただいてもよろしいですか?」

 自分でも笑えるくらいボンレスハムになっている。
 普段は口答えなどしないメイドたちに、本当にこれでいいのかと何度も聞き返されたくらいだ。

「あ、ああ、もちろんだ」
「ありがとうございます。ハァ、ドッコイショ」

 もはやドスコイの勢いだ。

 ひとりがけのソファには収まらないので、長椅子に腰を下ろした。
 しかしドン引いたはずの山田が、なぜか空いたスペースにはまり込んでぴったりと寄り添ってくる。

「あの、シュン王子……?」

 やたらといい笑顔をしていらっしゃるのはナゼ?
 そしてぷくぷくの手を楽しむな。

「ハナコが健康そうな体型に戻ってよかった。実は普段から痩せすぎなのではと心配していたのだ」
「そ、そうでしたの?」

 てか、戻ったとか言うな。人生でここまで太ったのは初めてじゃ。

「ああ、わたしはこのくらいがちょうどいいと思うぞ? うん、実に好ましい」

 ウインナーのごとしの指先をいじりまくりながら、山田の視線が体のあちこちを移動する。
 二の腕とか胸とかお腹とか、舐めまわすように見てるっぽい。

 まさか瓶底眼鏡の存在に感謝する日が来るとは思わなかった。
 でないと確実に殴りコロしてた。

 山田が帰ったあとのわたしは、もはや生きるシカバネだ。
 どうか心中を察してほしい。

 必死こいて太った結果がこれな上、今から地獄のダイエットが待っている。

「あー、王子、デブ専だったかぁ。華子、ドンマイ」

 くっそぉおうぅっ、絶対にモデル体型になってやるぅ!

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