断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 猫なで声を出して、ユイナが山田の腕をぐいっと引っ張った。
 周囲に気づかれない程度に、一瞬だけこちらをぎりっと睨んでくる。

(ふうん? そう来るんだ?)

 存在を無視されたことがそんなに気に入らなかったんかな。

 今回ハナコ(わたし)が怪我をしたのは、そもそもユイナ(あんた)を助けようとしたからでしょうが。

 で、実際ユイナはそれで階段を落ちずに済んだわけで。
 いくら魔法でわたしを防御してくれたと言っても、そこはまずユイナから礼があるべきだろう。

(ま、そんなふうに人ができてるなら、あんな騒動起こしたりはしないか)

 余裕たっぷりの態度で、ユイナににっこりと笑顔を向ける。

「あなた、ユイナ・ハセガーと言ったわね。先日はわたくしを助けてくれたそうね? ありがとう、心から礼を言うわ」

 高飛車(たかびしゃ)になってしまったが、これはもうどうしようもない。
 公爵令嬢の立場で、男爵令嬢のユイナに礼の言葉をかけただけでも、周囲に驚かれる案件だ。

「えっ、あ、あの、いえ、ソレはわたしも当然のことをしたまでで……」
「そう、謙虚でなによりね。今後もその優秀な魔力を使って、シュン様のためにも生徒会でお(はげ)みになって」

 ぷぷっ、ユイナの顔が面白いことになってる。
 こっちから礼を言われるとは、夢にも思ってなかったんだろうな。

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