断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「本か……最近では魔法学か経済学がほとんどだな」
「実用書ばかりですのね」
「空想に(ふけ)っていても、現実は何も変わらないからな」
「まぁ、努力家でいらっしゃいますこと」
「努力家か……」

 あれ、なんか遠い目してるし。嫌味のつもりで言ったんだけど。

 ああそっか、ダンジュウロウはもう十分努力してるんだっけ。

 どんなに頑張っても家族に認めてもらえなくて。
 全力を尽くしても天才には勝てなくて。

 そっか、そっか、そうだよね。
 君も苦労人なんだね。心中お察しするよ。

 でも、さ。

「他人の評価なんて、気にするだけ時間の無駄ですわ」

 それに振り回されると、どんどん苦しくなってくんだよね。
 もちろんわたしだって褒められればうれしくはなるけど。

「越えるべきは昨日の自分だけ。そうシンプルに考えていた方が、人生楽に生きられるというものですわ」
「越えるべきは昨日の自分……」
「ええ。それに人間、同じことで悩んでいるように見えても、ちゃんと階段を上っているんですって」

 いつか誰かがそんなこと言ってたのを聞いたっけ。

「その階段は螺旋状になっていて、上から見ると同じ位置にいるように思えても、横から見るときちんと上へと上がっているそうですわ」

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