断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「いいからわたくしが笑っているうちに素直に言うことを聞きなさい」
「うるせぇ、おかしな言いがかりつけてくんな!」

 スゴまれてちょっと(ひる)みそうになった。
 ってか、なんか掴みかかってきそうな勢いなんだけどっ。

 振り上げられた拳に思わず目をつぶった。
 しかし待てども痛みはこない。

 恐る恐る目を開けると、間に入ったケンタが男子の腕をねじり上げていた。

「ケンタ……!」
「何するっ、離しやがれ!」
「暴行未遂に窃盗行為……こっちは現行犯だな」

 男子生徒のポケットから、財布らしきものがひとりでに飛び出してくる。
 それはふわふわと宙を浮いて、おじいちゃん先生のところまで飛んでいった。

「かっかっか、これはいつの間に。お若いの、礼を言いますぞ」
「濡れ衣だ! それは俺のモンだっ」
「黙れ、話ならあとでゆっくり聞いてやる。姉上は今すぐ馬車に戻って。いいね?」

 それだけ言い残すと、男子生徒と一緒にケンタの姿がぱっとこの場から消え去った。
 これは転移魔法だ。

(何気にケンタも優秀なのよね)

 上級魔法なので使えるってだけでもすごいのに、他人も一緒に転移できる人間はさらにすごいって言われてるんだ。
 自慢の弟で姉ちゃんもすごくうれしいよ。やっぱり串刺しエンドは全力で避けて通りたい。

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