断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「分かったら、いい加減に手を離して」
「おまっ、黙って聞いていれば……!」

 おん? やんのかごるぁ。って、痛い、腕つかむ手に力を入れるな。

「昔っからお前は生意気なんだよ」
「昔から?」

 もしかして今日絡んできたのはむしろそっちの恨みから?
 わたし、マサトに何かしたっけ?
 子供のころの記憶をたどっても、これといったことは思い出せない。

 そのとき視界のはしっこで何かが動いて、ソレはマサトの袖口に止まった。

(あ、てんとう虫)

 てんとう虫って見たらラッキーなことが起きるって聞いたことあるし。体に止まるともっといいことがあるんだっけ。
 なんでマサトに止まるかなぁ。どうせならこっちにきてくれればいいのに。

「おい、人の話ちゃんと聞いてんのか?」
「聞いてるからもう手を離して」
「うおっ、む、虫っ」

 ようやくマサトもてんとう虫に気づいたみたい。青くなって、ぶんぶん腕を振ってるし。

 ってか、ちょっとそのリアクション、てんとう虫相手に大げさすぎやしない?

「てんとう虫は神の使いなのよ? そんなに怖がることないのに」

 暴れるマサトの腕を押さえ、てんとう虫を指に乗せる。
 指先に止まったまん丸いてんとう虫は、(はね)を広げ一瞬で飛び去ってしまった。

 恩返しならいつでもウエルカム。なんて思ってると、マサトにぎりっと睨まれた。
 わたし今、助けてあげたよね? なのにその態度はなんなん?

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