クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
『わかった。そもそも、礼なんかいらん。……海雪さんは、必ず幸せにする』

 俺が答えると、ばっと高尾は顔を上げて泣きそうな顔をする。

『ありがとう、天城……! 提携の話は、天城会に有利になるよう条件をつけてくれても構わない。父さんは必ず説得する』
『わかった。その条件なら、おそらくあいつらは動く』
 なにしろ徹底した拝金主義者たちなのだから。


 その日のうちに、十年以上ぶりに実家に連絡をとった。
 訝しむ父親を、嘘と真実を織り交ぜて説得する。

 高尾病院の娘と結婚したいこと。
 ただ「ただの自衛官に嫁がせるわけにはいかない」と突っぱねられ、どうしても欲しいのなら実家と繋ぎを取れと条件を出されたとつらつらと語ると、父親が少し興味のあるそぶりを見せた。

『提携の話が出ているんですよね。高尾の長男は友人です。あいつは妹に甘いから、妹からこちらに有利な条件を呑むよう働きかけさせます』

 その場で返事はもらえなかったが、高尾からも連絡をさせ、どうやら本当に提携が有利になるとわかるや否やあっという間に勘当などなかったかのように手のひらを返された。
 
まあこれは結婚後、改めて縁切りすればいいだけのことだ。




 一日でも早く、海雪を救い出したい。
 結婚を急ぎつつ、それでも彼女との関係を焦りたくはないと思った。少しずつ距離をつめ、いつか相思相愛になれたら。
 そして彼女を幸せにしたい。誰よりも幸福で満ち溢れた人生にしてやりたい。

 そう思っているのに、実際はどうだ。
 つっけんどんで不愛想な態度しかとれていない。

 初めてのデートで衝動的に買ったドリンクを無理やり飲ませ、式場もほとんど俺の意思で決めて。空回りしまくっている気がする。海雪が優しいからなんとかなっているだけだ。

 でも、彼女は式場を見て「ここがいい」と言ってくれた。
 少しだけ本心が垣間見えたようでうれしかった。急いで決めたドレスは、できる限り彼女の希望に沿った。

『あの、センスがなくて。いちばん無難なものを……』

 そんなふうに尻込みする海雪に胸が痛む。服さえ自分の好みで選んだことがないらしい彼女。
 何着も根気よく試着してもらう中で、ふと彼女の表情が変わった一着が、式で着たドレスだった。

 本来ならばフルオーダーしたかったものの、時間の関係でセミオーダーで限りなく好みに近づけ、式を挙げた。
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