クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 とろんとした瞳が俺を捉える。彼女から俺はどう見えているのだろう? 獰猛な獣みたいに盛っているのじゃないだろうか。自分でも呼吸が荒いのがわかる。

 海雪の両頬を包み込み、さらにキスを深める。
 唇が腫れてしまうのではないかと思うほどに、キスを重ねた。最初は俺が一方的に貪るだけだったキスだけれど、海雪がおずおずと応えるように舌を動かす。興奮と歓喜で思わず軽く彼女の舌を噛む。

 海雪があえかな声を上げ、俺のジャケットを掴んだ。
 ジャケットを脱ぐことさえ忘れてキスにふけってしまっていた。脱がなければと思うのに、今は海雪を味わうこと以外をしたくなかった。

 ようやく唇を離すと、海雪が陶然とした表情で俺を見ている。

 その顔が、どれだけ男を煽るのか、きっと知らないのだろう。
 俺はジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイをむしり取るように外す。邪魔だ。
 海雪がほんの少し身体を強張らせた。慌てて髪にキスを落とし、何度も撫でる。

「海雪。怖いことはなにもない。大丈夫だ」

 そう告げると、俺の身体の下で海雪が「ほう」と息を吐き出す。そうしてゆっくりと微笑んだ。

「はい」

 信頼たっぷりの声音に、たまらなくなって抱きしめる。抱きしめたまま、海雪の耳にキスを落とす。

「ん……」
「耳、弱いのか」
「わ、わかんな……ひゃあっ」

 べろりと舐めると、海雪がびくっと身体を揺らした。初心な反応にたまらなくなり、かりっと耳殻を甘噛みする。そうして舌で耳の溝――耳甲介あたりをざらりと舐めた。

「っあ、しゅ、柊梧さん」

 慌てる海雪の声を意図的に無視して、そのまま耳孔に舌を入れる。
 海雪の呼吸が、明らかに甘くなる。そして、そんな自分に彼女は戸惑っているようだった。初々しさに頬が緩む。
 まったく、かわいい。
 気をよくした俺は、さらに耳を舐めしゃぶる。海雪が快楽に混乱した声で「だめ」と呟いた。

「だめ、だめです柊梧さん、そんなところ、汚い」
「汚いわけがあるか」

 あえて耳元で答えると、海雪が鼻にかかった甘い息を吐き出す。
 そっと指を首筋に這わせた。海雪が身をよじる。俺は逃がしてたまるかと彼女を片手で抱きしめ、耳を舌で愛撫しつつ指先でその柔肌を撫でる。首から顎のしたを、猫でもかわいがるかのようにくすぐる。

「ん……あ」
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