クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 海雪は俺を見つめ、それから花が咲くかのように笑った。

「はい」
「そうか」

 答える声は、きっと掠れていた。安心感で指先が震えそうだ。
 初めてでもないくせに、どうすればいいのかもわからなくなりそう。

 自分もシャツを脱ぎ、海雪を抱き起して自分の膝の上に乗せる。
 薄い背中から抱きしめ、独占欲の痕が散る首筋に鼻先を埋める。くすぐるようにすると、海雪が小さく笑ってみじろいだ。かわいい。

 触れ合う素肌に、じわじわと幸福感で身体が満たされていく。海雪の体温を直接感じられる権利が、自分に与えられた僥倖に心から安堵した。

 海雪を幸せにしたい。

 誰よりも、世界中で一番自分が幸福なのだと胸を張ってもらいたい。でもきっと彼女はそうしないだろう。そんな彼女だから俺は惚れたのだと思う。それならば、俺は俺で胸を張れるようになりたい。俺は世界一海雪を幸せにしていると――そのための努力ならば惜しまない。

 ……まずは素直に感情を表すべきなのだろうけれど。
 俺は軽く呼吸を整え、海雪のうなじに触れるだけのキスをしながら口を開く。

「綺麗だ」

 ぴくっと海雪の華奢な肩が震え、少しのためらいを雰囲気に滲ませ振り向いた。
 不思議そうな顔をしている。俺はその目から目を逸らさず、はっきりともう一度告げる。

「君は、綺麗だ」

 海雪の頬どころか首までも赤くなる。真っ赤な耳朶がたまらなく好ましく、唇で触れればひどく熱い。抱きしめたまま再びシーツに押し倒す。

 組み敷いて、初心になんどもかわいらしい照れを見せる海雪をキスでなだめながら、ゆっくりと下着を脱がせた。

 彼女が身に着けているのは、薬指の結婚指輪だけだ。
 そっとその肌に手を伸ばせば、柔肌が手に吸い付くよう。指先でまさぐるように、けれど決して急がずに彼女の官能を刺激していく。
 指と舌で、緊張で強張る海雪を丹念にほぐしていく。

「は、あ……」

 海雪の呼吸は熱く、そして震えていた。キスして舌を擦り合わせれば、甘えるように舌先が絡まる。
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