クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 そう言って冷蔵庫にしまってくれた。ありがたく思いつつ、スマホを手になんとメッセージを送ればいいか迷う。

 逡巡してから、普通に「妊娠していました。いま八週です」と送信する。送信してからちょっと手に汗をかいていたのに気が付く。緊張していたみたいだ。ふと思いついて白黒のエコーも写真に撮って送信した。

 まあ、既読なるのがいつなのかもわからない。
 あまり気にしないようにしよう、と思いつつ過ごししばらく経った。

 身体が辛いからとはいえ、あまりのんびりしすぎても良くないと思い立ち、海辺の公園まで散歩に出かける。ここは海上自衛隊と米海軍基地の近くで、係留された艦船を眺めることができる。大きな船をベンチからのんびりと眺めていると、ふとスマホが鳴った。

「雄也さん?」

 通話にでると、雄也さんだった。心配してまたマンションを訪ねてくれていたらしい。

『ああ、あの公園か。いまから行くよ』

 しばらくしてやってきた雄也さんの背後に、久しぶりに会う毅くんのスーツ姿が見える。秘書兼運転手である彼の運転で公園まで来たのだろう。私を見て、毅くんは目元を綻ばせた。

「おめでとう、海雪。雄也さんから海雪が妊娠中だって、さっき教えてもらった」
「ありがとう」

 微笑み返すと、私の横に雄也さんが座る。私たちの前に毅くんは立ったまま、相変わらず穏やかに笑っている。

「海雪、つわりはどう?」

 雄也さんの質問に「もうだいぶいいんです」と答えつつ、苦笑する。

「吐きづわりは、なんですけど……どうにも眠くて、家にいるとついつい眠ってしまうのでお散歩にでてたんです」
「身体が休めと言っているんだよ」

 雄也さんは優しく微笑み、「それなら」と手を叩いた。

「公園の入り口にキッチンカーが来ていたよ。デカフェのカフェオレがあった。買ってこようか。身体も暖まるだろう?」
「え、悪いです」
「僕もコーヒーが飲みたかったんだ。毅はブラックだよね?」
「ああ、なら自分が行きます」
「いいよ、僕が言い出したんだし。毅は海雪といてあげて」

 歩き去っていく雄也さんの背中を見送りつつ、毅くんがふっと唇を上げた。

「それにしても海雪がお母さんか。いまいち想像できないな」
「ふふ、私も」

 そう答えつつ、私は鞄から持ち歩いている母子手帳ケースを取り出す。

「これ見て、赤ちゃん」

 エコー写真を見せると、毅くんは目を細めた。
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