クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
「へえ。かわいいな。多分、旦那さん似」
「うそ、わからないでしょ」

 くすくすと肩を揺らすと、毅くんはさらに優しげに目を細める。

「どうしたの?」
「いや、良かったって思って」
「なにが?」
「海雪が幸せそうで……母さんも心配してた。おれはまあ、そこまで心配してなかったけど」
「なんで」
「だって、天城先生だし」

 そう言って毅くんはニヤッと笑う。含みのある言葉に首を傾げたところで、雄也さんが紙袋を持って戻ってきた。
 三人で少しお茶をしたあと、毅くんに運転してもらいマンションの前まで送ってもらう。

「またな、海雪」

 運転席からそう言われ、私は笑顔で手を振った。



 その夜のこと。
 私はその日、どうにも夕食を食べる気がせずソファで横になりぼんやりテレビを眺めていた。やっぱり、眠りづわりなんだろうか、どうにも眠くてたまらない。少し家のことをしただけでひどく眠くなってしまっていた。幸い、吐き気はすこしずつ収まってきていたのだけれど。

 どうやら、テレビを見ながらそのまま眠ってしまっていたらしかった。

 玄関での物音に気が付き、身体を起こす。頭がまだ半分眠っているのかうまく働かないまま、手元のスマホに目をやって、ディスプレイに浮かぶ【不在着信 30】の異様さに気が付く。バッと目が覚めた。不在着信、三十件……? まさか、柊梧さんになにかあったんじゃ、と立ち上がりかけたところでリビングのドアが開いた。

 柊梧さんだ。無事だったことにホッとしてしまい、すとんとソファに座ってしまう。帰宅がいつになるかわからない、と言われていたけど……今日だったんだ。
 ようやく会えた彼の姿に、胸の奥がじわじわと温かくなった。
 おかえりなさい、と口を開きかけた私に柊梧さんが微笑んだ。
 頭がフリーズしてしまう。目を瞬いて頬をつねった。これもしかして、夢なのかな? 柊梧さんが笑ってる?

「海雪」

 頬をつねる私に、ホッとした声がかけられる。初めて聞く声音に目を丸くした。

「ただいま。すまなかった、寝ていたのか」
「え……あ、ご、ごめんなさい。ちょっと、その」
「構わない。構わないというか」

 柊梧さんは私のそばまで来てしゃがみ込み、私の顔を覗き込んで真剣な顔をして続ける。

「今は自分の体調を何よりも優先してほしい」
「あ……はい」
< 72 / 110 >

この作品をシェア

pagetop