噛んで、DESIRE



吾妻くんはそんなこと気にしていなさそうだけれど、学校でわざわざ話すこともないのか、喋りかけてくることは口パク事件以来、未だになかった。


小さく伸びをしながらテーブルを見ると、見慣れた書き置きが残されていた。


“ 夜はオムライスがいい。あと、先に行ってる ”



……オムライスがいいって、ちょっぴり可愛い。


わたしの家なのに、いつのまにか吾妻くんの匂いが残っている。


そんなことを思いながら、ふと気付く。

……最近、吾妻くん煙草吸ってない、かも。


わたしといるときはもちろん、彼の衣服からも煙草の匂いは感じていない。



……うーん、どうしてだろう。

わからぬまま準備をして、とにかく、また夜になったら尋ねてみようと思った。




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